何がどうしてこうなった!?原田先生に覆いかぶさられて

設定とか

主人公は長編“櫻色ノ薔薇”の子。薄桜鬼陣はSSL設定ながら、主人公は“欧州女学院”という別の私学出身。生徒会。学校間の用事で薄桜学園を訪れており、主要生徒・先生とは顔見知り。

一体何がどうしてこうなったと言うのだ。
私は今とっても暗い(周りが何も見えないくらい)空間にいた。 正確にはうつ伏せになっていた。暗くて何が何だかわからないけれど、腰よりちょっと下くらいの高さの多分机に向かって突っ伏せた体勢だった。 上半身は机の上で足の付け根辺りが机の角部分に、両足はまだぶらぶらしていて自由が利く。
そしてこの状況で一番に伝えておかなかればならないのは、うつ伏せに倒れ掛かっている私の上に原田先生がピッタリとくっ付いて覆い被さっているということだ。



欧州から呼ばれていつのもように薄桜に来た。 出迎えてくれたのはジャージ姿の数学教師…永倉先生だった。 疲れた表情の永倉先生にどうしたのかと尋ねれば、競馬に熱中しすぎて授業を一コマすっぽかしてしまったらしく、 土方先生に罰として図書準備室の整理を命じられたらしい。 思ったより散らかった図書準備室で今も原田先生と二人で整理しているとのこと。 原田先生は永倉先生と旧知の中で手伝ってあげているらしい。 良い人だ。うん、永倉先生の件は自業自得としてここまでは何も問題なかったはずだ。問題はここから。

「そう言えば土方さん、何か今立て込んでてしばらく応接室で待っててくれって言ってたよな…」

突然ポツリと呟く永倉先生。今、一瞬目がキラッっと輝いたように見えたのは気のせいだろうか。 何だか嫌な予感がする。


ちゃん!いや神様仏様様!一生のお願いだ手伝ってくれ!」


顔の前で両手を合わせて必死にお願いされているけれど、これは永倉先生の自業自得な訳で手伝う気はさらさら無かった。 きっぱりとお断りしようと軽く咳払いをする。 口を開いたと同時に身体が強く引かれた。

「そうかそうか。さっすがお嬢様だ、救いを求めている人を見過ごせないとな。助かるぜ!!」
「は!?ちょっと永倉先生!」
「大丈夫だ。タダとは言わんぞ。後で一杯酒でも奢ってやるよ」
「私はまだ未成年です!!」

永倉先生に強引に(それも結構な力で)図書準備室まで連れて行かれた。 扉の中に突っ込まれる。てっきり三人で作業開始かと 思っていたのだが、永倉先生はの思考の斜め上を進んでいた。

「よっし二人目だな!もっと手伝ってくれる奴探してくるから先に進めててくれ!!!」
「えっ!?ちょっと!」

握りこぶしに親指を立てながら永倉先生はそれだけ言うと扉を閉めて走り去った。 これはもしかして、謀られたということだろうか。視線を上げれば書類を手にした原田先生。 私を見た途端に眉をピクリと顰める。ものすごく驚いたような、それでいて憐れんでいるような眼差し。 色男先生兼赤毛の貴公子こと原田先生にそんな表情をされると地味にダメージが大きい…。


「ったく新八のやつ、関係ないちゃんに何頼んでんだよ。悪いな。ここは俺と新八が責任もって対処するから、ちゃんは用事を済ませてくれ」
「あっあの…」


ここで私が要らぬ憧れ(決して下心ではない)の感情を抱いたのがいけなかったのだろうか。 少しでも原田先生と一緒にいてお喋りをしたいという思い。応接室で待ちぼうけるよりはいい。 何度も言うが下心ではない。決して違う。…違うってば! 何度も何度も繰り返し唱えることで納得しようとする。


「私は別にいいです。どうせ待機だったらしいですし。お手伝いします」


手前の棚にある両手で抱えるくらいの大きさの段ボールを持ち上げる。 書類にしては中身が詰まっているのか、意外と重いなと感じた。 私がそれを真ん中の机まで運ぼうと向きを変え歩き始めた時だった。 後ろから原田先生の声。何か焦ったような、慌てているような声。

ちゃん!そりゃあちょっと待ってくれ!とりあえず、な?重いだろ?」
「大丈夫ですよ。ご心配なく」

先生も重たそうな大きな段ボールを抱えていた。 なのに、私の持った段ボールが気になるらしい。机まであとちょっと。 一歩、差し出した足の裏にシャリっとした柔らかな感覚と乾いた音。 視界がグラつく。

「(うぁ!滑った!?)」
!」

直感的にそう思った。段ボールを抱えながらも前の机に倒れ込む。 後ろから…いや部屋中から更に大きな音と衝撃、原田先生が私を呼ぶ声が同時に響いた気がする。
そこからは特に覚えていない。



そして今に至る。
状況を一度整理しておこう。段ボールを抱えながら歩いていた私は、落ちていた紙に滑って机に倒れ込んだ。 荷物は多分前に投げ出してしまった。自分の下にも手に触れる位置にも無い。 原田先生も段ボールを持っていた。後ろに居たから先生に何があってどうなったかもわからない。 でも今先生は後ろ向きの私の上に被さっている…はずだ。背中がピッタリとくっ付いて体温を感じる。 動きたくても上からの重みでビクともしない。辺りが真っ暗で状況が掴めない。 視覚以外の感覚で最大限に感じるのはそう、原田先生の体温と息遣いの音と振動だけ。


「うっ…。痛って、大丈夫か?」
「(今、名前で呼ばれた!?) あ…あの、原田せんせ…これって」
「ったく何が一体どうしちまったんだ。身体が痛くて重くて動かねえ。って、もしかして下に居るのちゃんか?」
「はい…そう…です」


見えてない。私には原田先生が見えない。そして原田先生にも私が見えていないのだろう。
しかしピッタリとくっ付いた私の背中と先生の胸部を始め前半分は、存在を確かめ合うには十分すぎた。 先生は身長も高いしやっぱり男の人なわけで私よりの肩幅も大きくて、存分に包み込まれている。 肩にはきっと先生の顔…頭が乗っかっている。先生が息を吐く度に耳を風が掠め、低く甘い声を拾う。 足を動かせば先生の足が当たるし、腰やお尻にも重みは感じている。

「悪い。上に何かがあって起き上がれねえ。むしろ左右にも一切動けねえんだ」
「私は先生がいるので動けません」

真っ暗で見えないはずなのに私は瞳を閉じて視界を遮断していた。 背中で感じた先生の体温はとても熱くて、耳元に風を感じる度に、先生の甘くて低い声を拾う度に私自身にまで熱を帯びドロドロに溶けそうだった。 鼓動はいつにもなく高鳴り胸を裂いて飛び出てきそうになっている。 男の人と手を繋いだことだってあるのに。こんなに頭が働かなくなったことは初めてだ。私、どうしたらいい。

原田先生には申し訳ないがしばらく口を開かないでもらいたい。 だって私の耳のすぐ近くには先生の顔があって、唇もあるわけで、先生の声が脳に響くから。 耳まで熱くなってきた。何だろうこの羞恥に満ちた拷問は。 早々に降参するから誰か早く何とかして!
その時先生が体勢を整えようと身体を僅かに動かした。 耳に先生の唇が微かに触れる。


「あっ」
「…」


自ら発した甘い声に顔を背ける。穴があったら入りたいとは正しくこのことだ。 何て、はしたない声。先生に聞かれてしまっただろうか。 もう10秒前の自分を張り倒したい。手を握り内側に爪を立てた。

「なあちゃん」
「は…はい」
「ちょっと聞いていいか?」
「な、何でしょう」

鼓動が暴走している。何を聞かれるのだろう。


「シャンプー何使ってんだ?」
「へ?」


今度は間抜けな声だ。穴があったら(以下同じ)  と言うのも何故いきなり原田先生は私のシャンプーの事を聞いたのだろうか。 考えを巡らす。


「いやっその、あれだ。ちゃんの髪から甘い香りがしてな」
「(って、匂いを嗅がれてる!?)」


普段から身だしなみには気を使っている方だ。今日ほどそれが良かったと思えたことはない。 頭の上から降ってくる言葉の一つ一つがの心を揺さぶる。耳元で感じる先生の吐息。 今も私の髪は香っているのだろうか。そしてその香りは先生に届いているのだろうか。 自分では気が付かないものだ。しかし香りの事を言われると途端に意識してしまう。 そう、その…先生の香りのこと。土方教頭とは違い煙草は吸っていないらしいが、何か香水でもつけているのだろう。 原田先生の“男”を意識させる香りはの心を揺さぶっていた。

足が痺れてきた。の足の付け根は机の角に押さえつけられている。苦しい…。 この体勢をどうにかしようと、身を捩ってみるがビクともしない。まあそうか。 だって上には原田先生が…。 私の様子を知ってか知らずか耳元で甘く囁く。


「キツいか?」
「足が…痺れてきてます」
「後ろにならちょっと下がれそうだ。合図したら動くから、楽な姿勢を見つけろよ」
「はい…」


もぞもぞと音と振動が響くと先生が後退したのがわかる。足の付け根も少し自由になった気がする。も先生に続いて後ろに下がろうと思うのだが、机にまるでべちゃりと叩きつけられたかのような体勢で体に力が入らない。 小刻みな振動と小さな呻き声にしかならなかった。

「手伝うぞ。ちょっと触れるが我慢してくれよ」
「は…い…」

足が見事に痺れております。この体勢はまるで机と一体化したみたいだ。 先生が体全体をから浮かせた。ああ…楽。うっかりのんきなことを考えられたのも束の間だった。 先生が片手で自分の体重を支えながら空いた手をの腹部へと回した。先生の手が!原田先生の手がお腹に! 先生が私を抱え込んでいるのだ。真っ暗闇ので中軽くパニック状態に陥りながらも、冷静を装うことに必死だった。

「行くぞ」

返事をしたくてもその隙も与えないくらい早く、グイッっと音がしそうなくらいに原田先生が腹部を持ち上げ後ろに引いたのだ。

「あっ、ああっ」
「…」

もう無理かもしれない。 はしたない声に恥ずかしがって、こんな変な体勢で一体私は何をしているのだ。 そして先生に何と思われているのだろう。考えたくもないけれどやはり意識してしまう。 原田先生には嫌われたくないのに。
相変わらず肩や背中、そしてお尻に先生を感じながら一人で一喜一憂を繰り返した。


「…キツイな」
「先生?」
「いや。何でもねえよ」


先生が小さく呟いたのを私の耳は逃さなかった。 無理もないの耳の横に口があるのだから。



*****



この状況の何がキツくてツラいかと言えばもちろんこの体勢だ。 身動き一つ取れないこと…ではなく、俺の下にはがいて彼女に覆い被さった状態ということだ。は女子にしてはまあ身長も高い方であったが、俺の下にいる彼女は包み込めるくらいに小さく華奢であった。 そして腰の括れと尻の張り。は生徒ということは十分にわかっているが、女が自分の下でそんな体勢だと考えれば考えるほど体は反応しちまう。 甘く香る彼女の髪も、育ちざかりな彼女の体も、耳や腹に反応する彼女の声も、全てがを女として意識させた。 こんな生殺しにも近い状況で耐え忍ぶ事が一番キくてツラかった。 新八…後で覚悟しとけよ。



*****



「先生、ごめんなさい。もう…足の痺れが限界です!」
「はぁー俺も色々と限界だ。我慢できねえ。ちゃん、悪い」
「えっ!?あっ!ちょっと先生!」


原田先生が思いっきり私の腰を掴むと同時に、どこからか扉が開く音がした。


「よぉーし!!左之にちゃん安心してくれ!3人目を連れてきたぜ!!!!って何で真っ暗なんだよ。ったく、もしかしてちゃんに手ぇ出してんじゃねえだろうな?確か電気は…」
「それもこれも新八っつあんが撒いた種だろ?」


扉が開いて永倉先生の声がして藤堂君の声もして、電気が点けられる音がして…世界が明るくなった。 暗闇にいた為か目は光に過敏に反応する。ま、眩しい! 目を精一杯閉じる。

「って何だこりゃ!?」
「うわー、ひっでー」

永倉先生と藤堂君の悲鳴が聞こえた。何よりもまずこの状況を確認しなければならない。 あれから一体何がどうなっているのだろうか。 恐る恐る目を見開けばまだ眩しいが、視線が目の前にある物を捉える。


「特別企画、女子大生百人斬り…?」


DVDのようなメディアパッケージ。裸の女性が、…お尻を突き出しながら机にもたれ掛っている。 何でこんな所にと辺りを見渡せば似たようなDVDパッケージが其処らに散らばっている。

「なっ何これ…」

上から左之先生の焦った声がした。


「頼むから何も見るな。忘れてくれ!」
「もしかしてさっきの段ボールの中身って」
「いや!これは新八のだ」


どこからかDVDがの目の前に表向きに滑り落ちてきた。 その表紙もタイトルも口にはできそうにないくらい卑猥すぎて、声が詰まる。は顔を真っ赤にしたまま金魚みたいに口をパクパクさせていた。 こんなものが周り一面に散らばっている。



「いやぁああああああああ!!!!!!!!」



狭い図書準備室の机の上で、の絶叫が響いた。



それから私の絶叫を聞き駆けつけた土方先生並びに山南先生、部屋に居た永倉先生と藤堂君によって私と原田先生は救出された。
例の段ボールを持ったまま地面の紙に滑った後、 原田先生は私を助けようと持っていた段ボールを投げ捨てて後ろから支えようとしたらしい。 そしてそのまま二人とも机に倒れ込んだ。私と原田先生の投げた段ボールは壁と棚と電気スイッチに激突。 電気は切れ、周りの棚は倒れ、棚に乗っていた物は散乱したというわけだ。 倒れた棚は丁度私と原田先生を挟むように倒れ込んだ。 直撃は免れたが身動きの取れない狭い空間を作り出した。

仕事場(学校)に私物、それも卑猥なDVDを持ち込んで置き場所にしていた永倉先生は土方先生と山南先生にこっ酷く怒られ、すべてを没収・破壊されていた。 自業自得だと思う。そして原田先生はあの段ボールの中身を知っていた。 誰もそれに気づいてないけれど絶対知っていた。
背中を向けている原田先生に近づく。

「先生は…あの段ボールの中身知ってましたよね?あと電気が点く直前、何を…」


静かな声。人差し指を自らの唇に当て、そしてそれを私の唇に押し当てた。 驚き見上げると先生は片目を閉じウインクした。


「んなもんナイショだ。守れるな?男なんざ皆、狼だ。斎藤みてえに石頭もいるかもしれねえけどよ。俺らにとったらちゃんはまだまだ子羊だ。気をつけろ。下手に信用してっと一思いに食われちまう」


指が唇をなぞる。



「可愛かったぜご馳走様。あと、ちゃんとスパッツは履いとけよ。水玉…悪くないぜ」



それだけ言い残して先生は準備室を出ていく。
スパッツ?そうだ今日に限って学校指定のスパッツを暑いし面倒くさいしで履いていなくて。 下着は水玉で…。
えっいつの間に!?原田先生!

仕事場に私物を置いちゃいけませんね。あと展開とオチが何とも駆け足になりました。

20140906*星宮はちこ 裏語