何がどうしてこうなった!?沖田君に跨って

設定とか

主人公は長編“櫻色ノ薔薇”の子。薄桜鬼陣はSSL設定ながら、主人公は“欧州女学院”という別の私学出身。生徒会。学校間の用事で薄桜学園を訪れており、主要生徒・先生とは顔見知り。

一体何がどうしてこうなったと言うのだ。
私は今、薄暗い空間にいる。正確にはうつ伏せになっていた。 そしてこの状況で一番に伝えておかなかればならないのは、私の下には沖田君がいて、彼の腹の上に跨った体勢であり、彼の胸板に全てを預けていると言うことだ。



欧州から呼ばれていつのもように薄桜に来た。土方先生の後を追い廊下を進む。 そろそろこの学校の構造…というか大体の場所が分かってきた。 ここを曲がれば職員室でその奥には特別会議室があるのだ。 今日の会議内容は確か…何だったけなんて、先生の背中を見ながら考えていた時だった。

「ちょっと失礼」

前方から声がする。声の主であろう人物は土方先生の脇を通り抜け私の横も通り過ぎようとしていた。 先生が振り返る。あれは…


「おい総司!待ちやがれ!!てめぇ昨日の古文の復習テスト、また白紙で出しやがっただろ!?これからみっちり説教してやる!」
「はは、嫌だな土方先生。冗談はよしてくださいよ。それに今から会議かなんかあるんですよね?」
「俺は案内だけだ。こいつを送ったら俺は自由なんだよ。今日こそは覚悟しやがれ」


土方先生の言葉を聞いてか沖田君の瞳が私を捉える。 彼の瞳はまるで宝石みたいで、そして何かを含んでいた。 楽しいことでも見つけたかのように目が細められる。私は知っている。 これはそう、間違いなく“良くないコト”が起こる前触れだということを。


「じゃあちゃんは僕が預かりますよ」


手を強く引かれる。何事かと自分の手を見れば沖田君の右手が私の手を強く握っていて思いっきり引っ張られていた。 体を強張らせたのが一瞬遅く、引かれるままは二~三歩よろける形で動き彼の隣に立っていたのだ。 私を見つめる沖田君は更にニッコリと、怖いほどの笑顔を向ける。 まるで何も言うなと念押ししているかのようだったが、実際には言葉が出なかった。彼への怯み…というものだろうか。 何も言わない私を余所に彼は続ける。



「土方先生はちゃんを送り届けたら僕に説教するんですよね?」
「ああ。今更何だってんだ」
「じゃあちゃんが会議室に行かなかったらいいんでしょ」
「はぁ?何言ってやがる…っておい!!」

「さよなら土方先生♪」
「!」


別れの言葉と同時に笑顔の沖田は走り出した。彼に手を引かれているも同様に離れてく。未だ状況を理解していない彼女の頭上には正しく“?”という記号が浮かび上がっている。 廊下にこの日何度目かの土方の怒鳴り声が響く。


「コラー待ちやがれ!」


の耳には先生の声すら遠くに聞こえた。 そこから何があったっけ? ひたすらに廊下を走っていた…いや引っ張られていた気がする。 見覚えのある廊下から右へ左へ、時に階段を使えばもうここがどこかすらわからない。

「ちょっと待って!沖田君!!」
「何?」
「って、うわっ!!」

私の言葉に沖田君がいきなり止まったものだから、彼の背中に思いっきりぶつかってしまった。 ふんわりと優しくて、それでいて普段意識したことが無いような男の子の匂いが広がる。 不覚にも心臓がドクンと高鳴ってしまった。何故だか視線を上げることができない。 きっと沖田君はこっちを見ているはずだろう。 もし、不覚にも心揺さぶられたなんて彼に知られてしまったら…恐ろしい。 きっとそれをネタに、散々何かされるに決まっているはずだ。

ちゃん。どうしたの?」
「え!?」

私の顔を覗き込むように沖田君の顔が近づいた。気付くのが遅くて対応が曖昧になってしまった。 そんな私を知ってか知らずか顔の距離はどんどん近づく。覗き込まれるような体勢だ。 彼の容姿は抜群に整っていると思う。同級生でかつ同じ剣道部の面々もまた然り。 欧州の女子生徒のなかでも人気が分かれるが、断トツで人気が高いのは沖田君だったりする。 ちなみにこのランキングは欧州の新聞委員が毎月独自アンケートを行った結果である。

「ふーん」

何かを悟ったような表情。いや悟られても色々困る。 更にニコニコ笑った沖田君に何度目かの恐怖を覚えた。 腕元の時計を見れば会議開始の時間はもうすぐに迫っていた。時間がない。 早く戻らなければ薄桜学園に迷惑が掛かってしまうだろう。

「とっ…とりあえず私は会議室に戻るわ。今回の事は沖田君が悪いんでしょう?自分で蒔いた種は自分で何とかしなさい!」
「ねえ」

来た道を帰ろうと彼に背を向けながら言い切った時だった。 背中側から一段と低くなった彼の声がする。振り返るのを躊躇してしまうくらいに、嫌な予感が胸を通り抜けるのを感じた。 彼と二人になった段階で私にとって良くない事が起こるなんて解りきっていたではないか。 振り向けば笑顔の彼…ではなくて、真剣な眼差しでこちらを見つめている沖田君がいた。



「このまま黙って帰してあげると思った?」



*****



「重いんだけど」


私の回想から一気に現実に引き戻したのは気怠そうな沖田君の声だ。 彼は今私の下に居る。…そうだ。私が上から跨っている体勢だった。

「ごめんなさい!すぐ退くから!」

重いだろう。人が一人腹の上に乗っかっているのだから。 幸い空間は薄暗いが障害物などもない。彼の上から退くことは容易だ。は足と手に力を込めてお尻を持ち上げた。その時を待っていたかの様に腰に強い力が加わる。 驚きつつ腰元を見れば手が添えられていた。 添えられるという表現が正しいだろうか、それはもうガッチリと掴まえられていたという方がいいのかも知れない。 何だろうか。少し困惑した。


「ちょっと…沖田君?この手、何?」
「うーん。僕がちゃんに押し倒されることなんて滅多にないからね。 だから簡単に退いてもらうとつまらないなって思って。“重い”って言ったのは今の体勢がってこと。 だからこうして…」


彼がそう言うと同時に思いっきり腰を後ろに引かれた。 一歩分ほど後退しそのまま彼の上に逆戻りする。さっきと何も変わっていないようなのは気のせいだろうか。

「今何が起こったかわからないって思っているでしょ?」
「ええ」
「上に乗る時は腹じゃなくて骨盤あたりの方がイイってこと。苦しくないから。ついでに言うと初めてでしょ?男の上に跨るの」
「はぃ!?」

実はそうだったりする。今までそんな機会は無かった…ってそんなもんじゃないの?  突然、そんなことを聞かれたものだから、声が上ずってしまってではないか。 そしてたった一回でそれに気づいた…ていうかどうして気付いたこの男、沖田総司。 やっぱり今の状況…危険だ。色んな意味で。 反応が曖昧な(と言ってもこんなこと真面目に答えられるわけがない)私を捉えながら、沖田君はやっぱり何かを含んでいるような表情で笑っていた。

「も、もういいでしょ!私、会議室に行くわ」
「駄目」

やっぱりこの体勢は良くない。だって…ねぇ。再び立ち上がろうとした私を何故か阻止する沖田君。 幾度か続いた押し問答…も空しく、結局私は彼の上に跨ったままだった。 彼の胸板に全てを預けながら、胸の中で高く鳴り響く鼓動を知られることに怯えていた。 しかし彼から感じる温もりと男の子の香りが、私の鼓動も、体温すらも高めていく。 恥ずかしい。いやそれ以外にない。 表情の悟られない薄暗いこの空間が唯一の救いだった。


「ねえちゃん。黙ってないで話しようよ」
「いきなり…何?」
「このままだんまりもいいけどさ、もっと君のこと知りたいなって思って」
「私は話すことなんてないけど。話したいなら沖田君が喋ってよ」
「酷いこと言うんだね」


いや、こんな状況で楽しくお喋りできる人間なんているのだろうか。 少なくても私にはできない。しかも私の下に居るのは何を隠そうあの沖田君なのだから。 下手なこと言えないし。 彼の表情を見ようとを重たい頭を上げれば、此方を真っ直ぐ見つめたままの彼と視線が交わった。 何?
何を言うわけでもなく彼は私を見つめていた。その表情には、いつもの彼らしい含みも何もなかった。 純粋な表情ともいうべきだろうか。薄明りに浮かぶ沖田君はどこか憂いを含んでいて、綺麗だった。 私も勘ぐることなく純粋にそう思ったのだ。


「じゃあ聞くよ。今、ちゃん彼氏いるの?」
「…禁則事項です」
「いないんだね。好きなタイプは?」
「…禁則事項です」
「なら一君と左之さんならどっち?」
「…」


真面目で頑固で、でもちょっとシャイな斎藤君。でも意外と、がっと来る時は来るタイプ。
色気満点、優しくてジェントルマンな赤毛の貴公子原田先生。でもきっと泣いた女の数も多いだろう。
イイ所と悪いところがあって、一概にこっちとは言えない。つまりは選べない。 私は沖田君の問いを真面目に考えていた。

「ふーん。じゃあ僕は?」

僕ってことは沖田君か。 お子様で天邪鬼、何が冗談で何が本心なのか心の内を悟らせない彼。 でも…本当は純粋で真面目でいい子なのかもしれない。 心の奥底にある純粋な“想い”を知られたくなくて、守りたくて、あるいは知ってもらいたくて天邪鬼なのかもしれない。 彼を一言表すなら…猫か。
これまた真剣に考えていた私の顎に彼の指が添えられた。 瞬きの時間も与えられずに引かれ、沖田君の顔を見つめていた。 視線が交わると同時に逸らすことが出来なくなった。少々の力をもって私の顔を固定した彼の指がそれを許してくれなかったからだ。 彼の瞳、今日一番に綺麗。

「で、僕はどう?」
「どうっていわれても」
「彼氏居ないんでしょ?」
「うわっ!?」

途端に思いっきり体を引き上げられた。やっぱり力を抜いていた私は彼になされるまま、寝そべる彼の肩口に顔を埋める体勢になってしまったのだ。 思いっきり抱きついていると言っても過言ではないそれ。 互いに直接見合ってはいないものの、肩で胸で鼓動で、意識するには十分すぎるぐらいだ。 いきなり何を。肩口に埋まった私の耳元で沖田君が口を開く。僅かに感じる風がくすぐったい。


「可愛い。ちゃんのこと…好きになっちゃいそう」
「じょ…冗談はやめて。私のことからかってるの?」


彼の顔を見ること無しに淡々と答える。下手に動揺を悟られても面倒だから。 零れる髪のカーテンで顔は覆われたまま。顔なんて上げれない。 きっと耳まで真っ赤。もう、静まれ私。静まれ私の心音。

ちゃん」
「うっ…はぁ…」

沖田君が耳元で私の名を呼ぶ。それと同時に彼の唇が僅かに耳に触れたのだ。
しまった! 我慢できなくなって溢れた声はきっと彼の耳にも届いている。 こんな無音の空間だ。響いているのは私の心音くらいか。恥ずかしい。 此処だけの話、私は耳元が弱いのだ。誰にも言ってないけど。 その時沖田君がこれでもかと言わんばかりに楽しい表情をしていたのを、下を向いたままの私は知らなかった。

ちゃん?ねぇ?」
「なっ…ぁ」

もう一度私の名を呼ぶと勿論唇が触れる。これは絶対ワザとだ。
私の耳は彼の呼吸の音すら溢すことなく拾う。 そして敏感なってしまったそこに彼の柔らかい唇が触れる度に、不本意ながらはしたない声が漏れた。いつの間にか後頭部に回っていた彼の右手は逃げることを許さない。そしてもう一方の手も背中と腰に回され、動くことすら敵わないのだ。 どうしてこんな…。きっと沖田君に遊ばれているだけなのだ。

「耳、弱いんだね。可愛い」
「も…、やめて…」

絞り出せた声も空しく、沖田君は耳への攻撃(決して愛撫などではない…と思う)を止めてくれなかった。 ワザと音を立てて口付けを落とす。熱い。耳が熱い。 耳から広がる熱に頭がボーっとしてきた。しかしそれすら許さない絶対的な沖田君は、優しくそこに歯を立てる。 現実に引き戻されるような僅かな痛み。噛まれたという事実。学校と言う場所でいったいどうしてこんな!
こんな瞬間、ほかの人に見られたら。そうだ。私は会議で薄桜学園に来たのだ。 本来は、今頃きっと会議が始まっているだろう。土方先生だって沖田君と私を探しているに違いない。 こんな所を見られたらどう言い訳すればいいのか。


「これ以上すると止まらなくなっちゃいそう」
「もう…無理…」

それは本心。これ以上は無理だ。弄ばれているという事実もムカついてくるが、耳が耐えられない。



「今日のところは、可愛いちゃんが見れたから良しとするよ」



そう言った途端に身体が起き上がる。私を抱えたまま沖田君が上半身を起こしたのだ。 ってすごい力。預けたままの体勢をどうにかしようと私も自身の体勢を整えた。 薄暗い空間で二人向かい合って座ったまま。言葉もなく無言。でも沖田君は私を見つめたまま。 私は…そんな沖田君を見れないでいた。

「言っとくけど、冗談なんかじゃないから」

それがどのことを言っているのかわからない。何が冗談じゃないのよ。まったく。

「でもまあちゃんが“耳が弱い”なんて初めて知ったよ。誰も知らない秘密だね」
「当・た・り・ま・えでしょ!」
「もちろん他言はしないよ。僕とちゃんの秘密だから」
「は?」

沖田君はさっと立ち上がると、座ったままの私に向かって手を伸ばした。 掴まれということだろうか。僅かな戸惑いの後、私はその手を取った。 力が込められ立ち上がりの補助となる。 今思うとここ…何処だろう? 見渡してみても覚えはない。


「秘密…バラしちゃだめだからね」
「誰がバラすものか!沖田君こそ…他言したらタダじゃおかないわ」
「はは!こんな楽しい秘密、誰にも教えないよ」


一番知られてはいけない危険人物に知られてしまったような気が…。


「さあちゃん。これからどうする…って、この音…」

私に呼びかけてすぐ、何かを察したように顔を顰める沖田君。 私は直ぐにでも会議室に戻らねばいけないのだ。 次こそは彼の手から逃れなければいけない。


「ゲームオーバーだね。残念、ちゃん。土方先生が向かってくるよ。僕は行くから後始末は宜しくね」
「…えっ?ちょっと!」


そしていつも通りの笑顔に戻った沖田君は、眼にも留まらぬ速さで目の前にある扉とは別の扉から消えた。 何?そっちにも入口なんてあったんだ。見えなかった。 なんて感心していると目の前の扉が勢いよく開けられた。 そこに居たのはもちろん沖田君の予言通り、眉を吊り上げさせた土方先生。



そして、軽いお叱りを受けた私はやっと無事に会議室まで連れて行かれた。
私が現れないままで会議は何も進んでいなかったようだ。 一通り薄桜の生徒に謝罪して、ようやく今回の議題を開始するに至った。 沖田君は相変わらず逃げているようだ。時おり聞こえる土方先生の怒鳴り声と沖田君を呼ぶ声が会議室にも響く。 二人の鬼ごっこは何時まで続くのやら。

~♪

マナーモードにしていたスマホが振動でメールの着信を知らせる。 会議もひと段落したところだったから、差出人を見ることなくそれを開いた。


チャン。今日は楽しかったよ。またよろしくね。今日の君、一段と可愛かったな(笑)
あ、例の事だけど、僕たち二人だけの秘密だからね♪忘れないでよ。”


そんなこと一々送らなくてもいい。ってか“また”って何だ。次はないわ! が本文に突っ込みを入れながらまだ続いている本文を見ようと下にスクロールさせた。


「えっ!!?」


驚きのあまり、周りも気にせずに声を上げてその場に立ち上がってしまった。 椅子が引かれ床を擦って鈍い音が響き、思いっきり立ち上がったからか長机に手を付いた音も大きかった。 何より自身の声は会議室中に良く通っていた。 皆の視線が集まるのを感じながらも、スマホの画面から目を逸らすことが出来なかったのだ。


“約束の証。秘密だからね♪”


そしてその文章の下には、私があの部屋で、寝そべった彼の上で、その胸板に全てを預ける私の姿の写真が添付されていた。 顔を上げていないものの、制服に髪からして私だと特定するのは容易だ。 ご丁寧に沖田君は顔もバッチリ映っている。つまり、見た人間が“寝そべった沖田総司にが抱きついている”と一瞬でわかるものだ。 何これ。何時のまにってか、何時撮った!!!? 彼のスマホにはデータが残っているだろう。これを使って日々脅される可能性だってある。



「沖田君!!覚悟しなさい!!」


荷物をそのままに私は会議室を飛び出していた。廊下を駆ける。 そして直ぐに、飄々と逃げる沖田君と叫びながら追う土方先生に合流した。


「待ちなさいー!沖田君!!!」
「あ?ちゃん。会議終わったの?」
「そうじゃなくて、あれ!いつの間に!?」

「内緒。ってか何のことかなー?」


相変わらずニコニコと笑顔の沖田君。なんて憎らしい。 とっ掴まえてスマホ破壊する。破壊してやる。弁償はする! そのためにまず捕まえる!
ああ、もう!一体何がどうしてこうなった!!!!!!!!!

総司の上とか…(色んな意味で)無理だ。ダメだ。手が出る←
20141123*星宮はちこ 裏語