レプリカ虚像乙女
【第二章、混濁 十二話、女同士でいこう】
隊士の治療から、私の周囲の環境は目まぐるしく変わっていった。
盲腸の切除手術をしたものの程度からすれば軽傷で、経過も順調な鳥羽さんは数日で医務室から離れ自室へ戻った。数日おきに傷口の状態確認の為に医務室に顔を出すのだが、彼が来る度に全く関係の無い隊士が数人医務室へと訪れるようになったのだ。久坂さんが主に傷口の状態を確認し直接話を聞いている間に、私は久坂さんの言葉の通りに内容を記録していく。付添いの隊士はその状況を観察しつつも時おり話しかけてくれるようになった。それは医務室という場所に限ったことではない。朝から始まる仕事の合間にも、外の様子がどうとか、これが流行っているだとか他愛のない話を交わす様になった。謎の愛人疑惑が持ち上がり余所余所しく接せられていたころよりは格段と過ごしやすくなったと言える。
「今…外では寺門お通というアイドルが流行っているんですって。私、知らなくて」
「“お通”は呼び名で本名は“寺門通”だよ。まあまあ無理もない。此処に篭っているだけじゃあ新しい見地は得られない。外の物が欲しかったらいつでも言ってくれよ!取り寄せるから!」
「あ、ありがとうございます。久坂さんってそういうの詳しいんですね」
私が船に篭っている間にも江戸を取り囲む環境か変わっていく。外界との接触がない今、鬼兵隊の隊士から聞く話やら、久坂さんが渡してくれる新聞が唯一外との接点だった。久坂さんが取り寄せてくれた本を読みながら、誰もいない医務室でひと時の自分の時間を過ごす。外の世界で過ごしたいわけではない…が、少しばかり体も頭も固くなってしまったような気がする。外に逃げたいわけではなく新たな刺激を求めているのだ。
ガチャリと扉の開く音がしたので誰かが医務室に入ってきたようだ。また誰かが体調不良を訴えているのだろうか。振り向くと意外な人物が立っていた。
「岡田さん…何か御用ですか?」
人斬り似蔵と恐れられる男…岡田似蔵。廊下で初めて会った時の印象は、掴みどころのない人というだけだった。どうもその存在は鬼兵隊の中でも浮いているらしく、人から聞く噂話では何一つ良いことはなかった。何でも狂気に任せて人斬りをしているだとか、血を求めているだとか、狂言があるだとか。船内でもあまり…というか殆ど姿を見たことはない。もしかしたら外の世界に拠点があるのかもしれない。しかしそこまで個人に深入りする気も無い。
「やっぱり此処にいたかねェ、お嬢ちゃん。今日は別に物騒なことはないさね。俺を贔屓にしてくれている旦那から、要りもしないってのに服を頂いちまったもんだ。それも若い娘の服さ。俺にはどうしようもないモノばかり。良かったら貰ってくれるかィ。来島また子だったか、あの娘子にやるよりはちっとはマシに使ってくれるだろうね」
「え…」
そう言って渡されたのは風呂敷包み。隙間から中身を確認すると着物がいくつか入っているようだった。驚いたまま咄嗟に反応できないでいると、岡田さんはふらりと背を向け医務室から出て行こうとした。
「あの、これは!?」
「貰いもんだ貰ってくれよ。見た通り俺が持っていても何の役には立たないもんでね」
それだけを伝えると、岡田さんは引き留める声も聞かずにあっさりと医務室から姿を消してしまった。残ったのは着物が数着。それに合わせた帯も幾つか入っていた。まさか着物を頂くとは思ってもいなかった。それもそんなに話したことのない岡田さんに、突然だ。手にした着物はどうすればいいのか。確かに持ってきた服はそう多くなく、一日の大半をナース服で過ごしていたくらいだ。着替えはあるに越したことは無い。
はそれをありがたく頂戴することにした。何時になるかわからないが、次に会った時はお礼を言わなければ。医務室から廊下を覗いてみても、案の定、岡田さんの姿はなかった。伝聞する噂は所詮噂の域を越えない。まだそう親交が深まったわけではないけれど、少しだけ岡田さんに対する印象が変わった。もしかしたら、もしかすると…隊士たちの私に対する印象の変化もこういった小さな出来事なのではないかと思う。小さな変化を積み重ねて、疑われても少しずつ疑惑を解いて…私は私という存在を示し、進んでいけばいいのではないか、と。
*****
それから私にもう一つ変化が訪れた。
「時間ッスよ!」
「あっはい」
初めて船の外に出ることになったのだ。と言っても、護衛兼見張りの来島との行動は必須で、勝手な行動は認められていない。外に出る目的というのは、鬼兵隊に相応しく情報収集だとか攘夷活動とか大それたものではなく、ただの物資補給とのこと。物資補給…難しく言っているが要は身の回り品を買えとのことらしい。殆ど身一つで逃げ出してきた私にも、ここに来て暫く生活している間に不足する物が増えてきた。ここでは、鬼兵隊として外から物資の積み込みを行っているが、それは食糧やら武器やらで組織維持の為のものである。個人の必要な備品は隊士それぞれが町に出て買っているが、私は外出が許されていないので買いそろえる術はなかった。それに気付いた久坂さんがおおよその身の回り品を外から揃えてくれたが、それでも足りないものもあれば言いづらい品物もあった。表情にも行動にも出していないはずであったが、それに気付いたらしい久坂さん(それはそれですごいと思う)から高杉さんに進言したらしいのだ。断られるとも思っていたが、来島の同伴を条件に外出が認められたと言う。今日がその日だ。彼女がほぼ約束の時間通りに医務室を訪れたので読んでいた本を閉じた。
「それ…何読んでたんスか?」
「あ、これ【誰でもわかる★攘夷思想】と【これで君も攘夷志士!】です。久坂さんが取り寄せて下さって」
誰にでもわかると謳ったわかりやすい解説本だ。攘夷浪士とは何か、どのような思想で何をしているのか…知識として頭に入れておくには一般人向けの本を読むのが一番だろうと思ったから。この本のおかげで攘夷の思想や組織について、粗方知ることが出来た。勿論、鬼兵隊に付いては書かれてはいないのだが。表紙を見た途端に来島さんが眉間に皺を寄せる。
「そんな本は所詮、学者気取りの一部の人間の話でしかないんスよ。実際のウチ等の活動に触れた方が手っ取り早くて確実な気がするけど」
「まあまあ。私…“鬼兵隊”を名乗ることすら許されてない一般人なんで。本で許して下さい」
そう言って二人で医務室を出て廊下を進む。久坂さんは丁度席を外しているのだが、来島さんが迎えに来たら医務室を開けたまま出発してもいいと許可を貰っている。
「にしても着物姿は新鮮ッスね。ずっとナース服しか印象無いもん」
「戦以外で戦闘服は浮きますから」
「いや、だから戦闘服は意味不明だから」
階段を上がった先の風景は、洗濯物を干すのが日課になった私にとってはもう随分と見慣れたものだ。今日はその先へ進むことになる。私は無意識に上を見ていた。今日は窓が開いている…と言うことは上にいるのだろうか。それだけ、ただそれだけだ。
は頭を振って視線を戻す。視線の先には船の脇に掛けられた、港に降りる階段があった。下には見張りだろう鬼兵隊の隊士が数人、私達が降りてくるのを待っていた。勿論船の上にも。私達が近づけば彼らは途端に駆け寄って来たではないか。
「来島殿ォ…
さんを頼みますよ!!」
「
さん変な野郎にはついて行っちゃ駄目っすよ!」
「ちゃんと戻ってきて下さいよ!!」
「はっ…はい」
「って、少しはウチの心配したらどーなんスか!?」
何故だろう。心配されているはずなのに思わず表情が固まった。これは間違いなく…彼らに“子ども扱い”されているのだ。今までそんな素振りを見せたことも見せられたことも無かったのに今になって急にである。何だ。私がそんなお菓子に釣られてホイホイついて行っちゃうような馬鹿な女に思われているのか。もう二十歳越えてるんですが。むしろ来島さんより年上だと思うのですが。隊士の一人は今にも泣きだしそうな顔をしていた。だからそう心配されるようなことは無いと思うのだが。するとどこからか聞き覚えのある笑い声が聞こえた。
「ああーっ!久坂さん!!久坂さんもこいつ等に何とか言って下さいよォ!!」
来島さんも声の主を捉えたらしく駆け寄って自らの主張を繰り返している。久坂さんは船の側面にある手すりに寄り掛かり笑っていた。
「皆心配なんだよ。ワザとじゃないんだ許してやってくれ
君。僕からも言っておく。ちゃんと戻って来てくれよ。君ほどの助手は無くすには惜しい」
「安心して下さい。夕方には戻ってきますから」
「ってェ誰かウチの話を聞けやァアア!!」
「来島さん…行きましょう!」
叫ぶ彼女の手を取ると長い階段を降りようとした。その時だった。
「ッ!?」
匂いがしたのだ。…あの匂い。咄嗟に上を見上げても開いた窓はそのままで人影すら見当たらない。それにあの高い位置からではきっと匂いは届かない。ならばもっと別の場所…同じ甲板とか。視線が左右に動く。が、来島が一歩階段を降りたと同時に
の足も長く続く階段に進んでいた。今は降りることに意識を集中させないと転がり落ちてしまうだろう。名残惜しくも私はそれ以上の詮索を諦めた。階段を降りるごとに視線が下がり港町の高さに合わさっていく。降り立った先でも、隊士の反応は似たようなものだった。髭の生えた厳ついオジサンも何だかんだ心配して声をかけてくれた。恐らく今まで話したことがない人だ。逆にこちらが名前を知らないような隊士にも。後で久坂さんに名前をこっそり教えてもらおう。
降り立った先は外の世界。私達は今から普通の女の子×2なのである。少し寂れた港町には、浪人の名にふさわしい方々がうろついていた。ここでは私達の方が明らかに浮いているのである。しかしそれも鬼兵隊の一味だろう。浮いている私達には目もくれずに淡々とすれ違うだけだ。いつの間にか港町を抜けた私達は、繁華街へと続く鉄道の駅に辿り着いていた。
街に出て早々私が訪れたのは闇の換金屋だった。これだけは“行きたいところ”とリクエストしておいたのである。理由は簡単だ。家から持ち出した貴重品並びに首から下げてきたネックレスの処分。表には流せないので犯罪者が使うような裏の店である。こんな所に素人の私が行けば間違いなく別の犯罪に巻き込まれてしまっていただろうが、それは裏事情に詳しい攘夷組織鬼兵隊の情報を使わせて頂いた。来島さんには「ウチ等、別に盗人じゃないんスけどね」と小言まで頂いたが。それはそれ。鬼兵隊が取引するような店なら少しは信頼できるなのだろうという考えだ。手数料は少し高かったが、それでも使う機会のない貴金属を処分し現金に換えることが出来たのは大きい。幾らか現金は持ってきたが増えるに越したことはないのだ。鞄がパンパンになってしまったので残りは体に巻きつけておこう。向こうが差し出した帯び付きの札束を見て来島さんが白く固まっていたのはここだけの話。24金メッキと本物のダイア・ルビー・エメラルドの悪趣味ネックレスは意外と高値になった。いや、元値は把握してないけど。使わない宝石より現金だ。
換金屋を出た後は普通に買い物三昧…主に日用品。激安で有名なドラックストアで買いあさるのは楽しい。シャンプーにリンス、石鹸、歯ブラシ等の生活に必要なモノばかり。服は幾つか岡田さんに頂いたので、下着類以外は極力買わないようにしておいた。他に久坂さんに取り寄せて頂くには言いにくい品物も買い溜める。
「にしても随分買ったッスね。もう買い物袋はちきれそうッスよ」
「大体これくらいですかね。あ、そうだ…ついでにそこで甘味でも食べませんか?」
「ハァ…ほんとピクニック気分だな」
そうは言いながらも来島さんも甘いモノを欲していたようで、二人で軒先の席で休憩することにした。おすすめの甘味セットを頼み、重い荷物から解放された私達はどっと息を吐いた。
「そう言えば…アンタ、歳は幾つだっけ?」
「二十とちょっとですけど」
「え!?そんな上なんスか?」
来島さんが年下ってのは見ただけでわかる。それは向こうも同じだろう。間違っても私が来島さんよりも年下ってことはないはずだ。なのに今の反応は何だ。高々数歳…十も離れてはいないのに。私は来島さんに探る様にジッと見られている。だから何なんだ。無言の私達の所に甘味セットが運ばれてきた。あ、美味しそう。金属製の洒落たスプーンを手に、頭の中はあんみつ一色だった。
「じゃあ百歩譲って年上だとして…その…
…サンで、…いいッスか」
「え…」
彼女の言葉に思わず手の力が緩んだ。高い音を立ててスプーンが床に落ち転がった。周りの客は何事かと一瞬だけ視線を寄越したが、直ぐに興味を無くしそれぞれの会話に戻っていく。ツンデレ代表(?)の来島さんが…デレた? 視線を逸らしながら恥ずかしそうに来島さんは確かに、初めて“
”と下の名前を呼んだのだ。嬉しい。鬼兵隊の一般隊士に話しかけられるよりも、来島さんに名前を呼んでもらえた事がただ嬉しかったのだ。
「本当ならウチも、歳だとか職位とか一応考慮するんスけど。呼んでいいなら…そっちの方が呼びやすいかなって…思っただけッス」
「来島さん私…嬉しいです。どうぞ好きに呼んでください!」
そう言ってニコリと微笑んだ。この笑顔は心の底からの感情が表れたのだろう。そして、視線を外しながら照れる来島さんが可愛らしすぎて、正しく“どうしよう”な気分なのである。一人舞い上がっていると優しい眼差しになった来島さんはポツリと「アタシのことも好きに呼んでくれていいッスよ」と言った。照れ隠しなのか、言い切った後に添えられた団子を口に頬張っている。
「じゃあ、“また子さん”で宜しくおねがいしますね」
「何でもいいけど」
名前で呼んだことをきっかけにまた子さんとの会話は弾んだ。江戸の流行だとか船の中の生活だとか、最近の世の情勢だとか。秘密事項は何もないく精々一般人の世間話の範囲だった。
「それで寺門通さんのこと“寺門お通”って言ってしまったら… ─ッ!?」
私達が巷で流行りのアイドルについて話している時、船内で感じたものと同じ“嫌な気配”を感じてしまった。一体何なのだろう。ここは外なのに確かに誰かに見られているのだ。怪しまれない様に自然な動作で辺りを見回す。時に髪を触っているふりをしながら周囲の人を観察するが怪しい人は見当たらない。…当たり前か。
「どうかしたんスか?」
「いいえ…何にも。えっと、何の話でしたっけ?」
「久坂さんの話ッスよ」
また子さんとの会話の中でも時おり周囲を気にしてみるも、再びあの嫌な気配を感じることは無かった。女が二人集まれば話が長いと言うが正しくそれだ。気付けば軽く一時間は話し込んでいた。そろそろ戻らねば、船に着くころには陽が暮れているだろうか。急がねば。支払いを済ませて両手に荷物を抱えると、私達はようやく帰路へと付いたのだ。
電車は座れるので楽だったが、残りは両手に荷物を抱えた状態での徒歩だったのでどうも時間がかかってしまった。大人しくタクシーを使った方がよかっただろうか。しかしここまでくれば港町は目と鼻の先だ。大人しく歩こう。見覚えのある通りを抜けると、大きな船舶が見えた。タラップの傍にはゴツイ体格の浪士が二、三人集まっている。傾きかけたオレンジ色の空の下で船に近づく私達。ふと…上の建物に視線が行った。開いた格子窓の桟には人影がある。視力は他人と比べても良い方だ。見間違うはずもない。…高杉さん。目を細めなくてもあの左目に巻かれた包帯に艶やかな色合いの着物も見える。また煙草を吸っているようだ。だが上ばかりも見ていられない。
が視線を戻すと、下にいる隊士たちも私達の存在に気づいたらしく直ぐに駆け寄ってきたのだ。あの厳つい顔の(ごめんなさい)隊士もご丁寧に買い物袋を持ってくれた。どうやら医務室まで運んでくれるらしいのだが、そこまでは断りつつ、せめて階段の道中だけでも持ってくれるようにお願いした。私は両手が自由な状態で船に上がった。再び上を見上げても、人影はなくただ開いた窓だけが残されているだけだった。
「また子さん。機会があればまた是非外に連れて行って下さいね」
「まあ…こーいうのもたまには悪くはないッスね」
そう言いながら笑い合う。彼女とはそこで別れた。船内へと続く階段を降りながら医務室への道のりを歩く。長い廊下の真ん中に余所から繋がるT字路がある。医務室への道順的にはこの廊下を真っ直ぐ進めばよかった。特に気にもせずT字路に差し掛かる。前だけを見ていたのに、ふらりと横に、繋がるT字路の先に視線が動いた。しかし歩みは止まらないまま。だが
はその存在に目を見開いた。
「高杉さん…」
蛍光灯の明りの下でも、彼の紫紺の髪は艶やかさを失わず存在感をありありと示していた。気怠そうに壁に背をもたれ掛けて両手を組んでいるのだ。今は煙草は吸っていなかった。
の声を聞いて、彼がチラリとこちらに視線を向けたのがわかる。今回のこの外出の件は久坂が高杉に提案し、それを彼が了承したから実現したのだ。
は彼に一言礼を言いたかった。一歩二歩後ろ向きに廊下を戻ると、そのまま高杉の前へと歩み寄り、頭を下げる。
「外出の件、ご了承いただきありがとうございました。良い刺激になりました。ついでに物も揃いましたし」
笑いながら両手いっぱいの荷物を掲げる。久々に思いっきり買い物をしたなと我ながら思った。嬉々とする私に対し高杉さんは冷静…いやほとんど興味が無さそうで「そうか」と声を発した以外は無反応だった。男が考える女の買い物なんてまあそんなもんだろうと思う。そこでふと、頼まれてもいないが彼にお礼兼土産の意味で物を買ってきたことを思い出した。買い物袋をまとめてしまったのでどこか奥にあるはずだ。ガサガサと袋を漁る姿は我ながらガサツだなあと客観的に感じてしまう。店員が丁寧に箱に入れてくれたからか、手触りで見つけ出すことが出来た。そのままそれを高杉さんの前に差し出す。箱に入っているからか、外観だけでは何が入っているか判断できない。
「これ…お礼と言ってはアレですが、まあお土産だと思って是非受け取って下さい。要らなかったら捨ててもらっても構いませんので。とても艶やかな柄ですが携帯灰皿…」
「…」
高杉さんは終始無言だった。巻き煙草でもないのでポイ捨ては無いだろうがあると便利かなくらいの感覚だ。そもそも刻み煙草なら煙草盆を使うはずなので携帯灰皿…使うのかどうかは選択の時点で冒険だった。使わないなら使わないでそれでいい。半ば無理矢理彼の手に押し込めるとその場を後にしようとした。まだもう一人土産を渡したい人がいたのだ。この船に居るのかどうかは不明だが。
「お前も…酔狂な奴だな」
後ろから返ってきた声には「良く言われます!」と笑いながら答えておいた。嘘なんかじゃない。物好きだなって昔から言われていたから。結局その日は目当ての人…岡田さんには出会うことが出来なかった。買ってきた最後のお土産は久坂さんに渡して、初めての外出劇は無事に幕を降ろしたのだった。
また子嬢がデレた可愛いの巻。
20160819*星宮はちこ 裏語