レプリカ虚像乙女
【第六章、忘却 五十三話、終わりの文字はZ】


さん。今日の清掃も新人隊員にお任せ下さい」

清蔵さんに言われることはや数日。私のお仕事の一つだった清掃並びに草取り業務は新人隊士のものとなった。教育期間中の彼らとの接触は許されていない。清蔵さんも彼らの教育に熱心で、会う機会も限られてくるようになった。その代わりに、私は負傷した隊士の簡単な処置を任されるようになった。
医師免許を携帯していないものの、私が医者なのは周知の事実なので問題ないらしい。それに症状の酷いものはすぐに近くの病院で診てもらうよう促している。小さな手傷などはそのまま放置していた隊士も事務所に顔を出して消毒を頼むようになったと言う。

事務所から部屋に戻ろうとしたら数人の隊士とすれ違う。何やら騒がしく話し込んでいる様子だった。たまたま向こうからやってきた土方さんに「何かありましたか?」尋ねても「いや、何でもねぇよ」と言われた。その様子からしても何かあったのは違いないのだが。

「あ、清蔵さん!」

麦わら帽子を被り、首にタオルを巻いた清蔵さんが廊下をこちらに向かってくるのが見えた。午前の草取りを終えたらしい。
「何かあったのですか?」と、は人が集まる事務所を指差した。ジッとその方向を見つめた様子で「ああ、恐らく……」と教えてくれた。何でも最近、屯所内で備品やら個人の持ち物が無くなる事件が横行しているらしいのだ。もちろんそれらは窃盗行為で局中法度にも引っかかる。外部の犯行、とも思いたいが事件は屯所内部でばかり起こっているので現在調査が進められているという。通り過ぎざまに隊士が発した言葉が「今回は事務所の金も無くなっていたらしいぞ」の耳に届いた。


「不粋な連中はいずれ裁かれる事でしょう。ところでさん、レモネードでもいががですか?」
「レモネードですか?」
「ええ、こう見えて私の手作りです」


目の前の甘美な誘惑からすれば、物騒な事件はどこか遠くで起こった出来事の様に感じる。屯所内の事件の事はもはやの脳内には刻まれていなかった。食堂に移った私たちに清蔵さん特製のレモネードが振る舞われる。

美味しい!

すると「美味そうなもん飲んでるじゃねーかオイ」なんて沖田さんの声が聞こえたと思ったらジャイアン並みの速さで彼のレモネードは奪われていたけれど。


「沖田隊長!それは私の……ってもう飲んでるし!」
「おー清蔵ご馳走さん。これで午後の巡察も頑張れるや」
「確か隊長は副長と“例の件”で巡察中ではありませんでしたか?」
「今は土方さんにお任せしてるから問題ねぇ」


何だ“例の件”って。屯所内の窃盗事件の事だろうか、と思っているとレモネードの二杯目を飲み始めた沖田さんが教えてくれた。
屯所外、つまり江戸の町で攘夷組織の犯行とも思える連続器物損壊事件が多発しているらしいのだ。現場には真選組への挑発とも取れる犯行文が残されているとのこと。目ぼしい潜伏先を虱潰しに捜査しているのだが、どれもあと一歩の所で事前に逃げられてしまうらしい。いつも潜伏先はもぬけの殻状態。それに関連してかは不明だが、潜伏先の周辺ではいつも婦女暴行事件が発生しているらしいのだ。何とも恐ろしい。

「ま、ここにいる限りは安全でさァ。悪い奴等はお巡りがしょっぴかねーとな」

輪切りのレモンを囓りながら沖田さんは巡察に出かけた。連続器物損壊事件は私を追う攘夷組織の犯行なのだろうか。今の会話からは読み取れないけれど。


「まあまあ、ここにいる限りご安心下さい!この隈無清蔵が……未曾有の汚れからお守り致します!!」
「うふふ。ありがとうございます。あ、これもう少し頂いてもいいですか」
「構いませんよ」


レモネードを新しいグラスに注いだ。あの人に差し入れしようと思ったからだ。それでは、と清蔵さんに会釈してその人の部屋に向かった。初見の時より、反応こそ変化がないものの私への不信感は取り去られたような気がする。多分だけど。

「失礼します。斎藤さん?」

その人は三番隊隊長の斎藤終さん。ほぼ毎日……こうしてお茶を(勝手に)運んでいたりする。その様子を沖田さんに話していたら、まるで夏休みの朝顔観察日記みたいだななんて笑われてしまったけど。
私を迎える斎藤さんは、こちらに背を見せながらずっと机に向かって何かを認めているばかり。それでも声をかければ、チラリとこちらを視線を寄越してくれるようになった。それすらも大きな進展だ。


「暑いので良ければ清蔵さん特製のレモネード、いかがですか?」


斜め後ろに座り込んでお盆からレモネードのグラスを机に置いた。これ美味しいんですよ、と自分が頂いた時の味の感想を添えて。
その時斎藤さんが机の上の何かを指差した。何だろうかと疑問に思って覗き込めば、昨日のお茶と茶菓子に添えた“お疲れ様です。良ければどうぞ”と手書きメモ。

最後に墨書きの“Z”の字が付け加えられていた。

それを掴んだ斎藤さんは紙をの前に差し出した。私に……ということだろうか。受け取って文面を眺めていると、最後の“Z”は確かに彼が書き足したものだろう。その文字の意味もわからないけれど、彼から何かしらのレスポンスが来たことが嬉しかった。「ありがとうございます」紙を手に私は笑った。

「失礼します。斎藤隊長! 貴女は……」

斎藤さんのお部屋に誰かが訪れたらしい。振り向けば初見の隊士が立ってるではないか。隊長格始め沖田さんの一番隊の方ぐらいしか知らないのでどの隊かもわからないが。


「あ、すみません隊長を訪ねる方がいて動揺してしまって。私は三番隊所属の井川新吉と申します。女中さんというご紹介でしたね」
「はい。です。どうぞよろしくお願いします」


自己紹介の後私は頭を下げる。井川さんは手にした書類の束を斎藤さんの机の横に置くと「隊長。これ例の資料です」と言い部屋を出て行った。他の隊よりかはずっと少ないけれど、彼を含めて三人隊士がいたはずだ。となれば後一人か。
そのまま筆を取り続ける彼の仕事の邪魔にならないように「それでは、お仕事頑張って下さい」とだけ言い残して私は部屋を離れた。頂いた斎藤さんからの返事、後で沖田さんに自慢しよう。

度重なる巡察でも、例の器物損壊事件の犯人であろう攘夷組織にたどり着けなかったのだろう。その日沖田さんの帰りは遅かった。疲労が垣間見える表情に、斎藤さんからの返事を自慢出来るほどの神経の図太さは持ち合わせていない。

「お疲れ様です」

と素直に労うだけだ。


「ったく、今日も町中ズタボロでさァ」
「器物損壊ってそんなに酷いのですか」


曰く建屋への落書きやら建物の破損ならば軽微な方で、最近は公園やらに動物の死骸がばら撒かれていることもあるらしい。おまけに幕府や真選組に対する挑発文がペンキで書かれているとのこと。想像以上の惨状に言葉を失った。そんな事を攘夷組織がするだなんて……。私がイメージする攘夷組織の活動とはずいぶんと違った。
彼の体調を気遣って私は早めに就寝する事を決めた。例えば、風呂の時間が遅ければ見張りの沖田さんに迷惑がかかるだろうから。普段はまだまだ動いている時間だが、今日ばかりは布団に入り天井を眺める。寝る気がなくても、意識が薄れてくるから不思議。

ァ。おい、もう寝やがったか……ったく”

夢の中で誰かが私を呼んでいる。ひどく懐かしく感じるけれど……覚えはない声。これは夢だ。それを認識した時だった。

ーうぁあああ!

と、遠くから小さな悲鳴が響いてきた。はっきりと私の意識を呼び覚ますような、現実感。

「!」

閉じていた目蓋が開く。今の悲鳴、遠いけれど確かに聞こえた。
月明かりが照らす障子をいくつもの影が通り過ぎていく。皆乱雑な足音を立てながら。屯所内で何かが起こったのだろうか。布団から抜け出て障子に体を寄せると耳を当てて外の音を拾おうとする。が、足音は疾うに遠ざかりもう何も聞こえない。恐る恐る障子を少しだけ開き外を伺うも、変わらぬ庭があるだけだ。次は顔を出してみるが全てが静まり返り、先の悲鳴も足音もまるで夢の中の出来事のように錯覚させる。





私の名前を呼ぶ声が聞こえた。声がした方に顔を向けると、きっちりと隊服を纏い刀を提げた沖田さんが廊下に立っていた。首元には彼の愛用のアイマスクが下げられている。と言うことは、彼も寝ていたのではないだろうか。

「今夜は絶対に部屋から出るな」

強い口調で言われた。やはり何かあったのだろうか。


「あの……」
「あん? メス猫。朝まで大人しくしてろ」


反論すら許されない状況だ。真夜中の悲鳴、混乱する隊士とは一体何があったのだろうか。彼の言葉を受け入れると、そのまま沖田さんは声がしたであろう方向に戻って行った。再び布団に入る気にもなれずに、緩んだ寝巻きを整えると障子に背を向けて、その場に膝を抱えて座り込む。どれくらい時間が経ったであろう。やがて数人の隊士の話し声が近づいてくるのがわかった。その声は覚えはないものばかりだ。

“あれ三番隊の……だろ”
“……屯所での窃盗に横領は、奴の……”
“一応あそこは特殊部隊だからな。隊規違反で粛清か”

声と気配を殺して隊士の会話に耳を集中させる。“三番隊”と“粛清”という単語を拾う。真選組には「局中法度」という決まりがあり、それを犯した者は粛清されるという。最後の言葉からして、誰かが粛清されたというのだろうか。

三番隊……って斎藤さん? まさか斎藤さんが粛清された?

数人の影がの部屋を通り過ぎる。あの斎藤さんが粛清されたなんて。頭も心も混乱していた。
しばらくして「、寝やしたか」と障子越しに小さく声が聞こえた。「沖田さん?」思ったように声が出なくて、私の声も小さかった。いつの間にか障子に影が伸びているではないか。


「さっきは大声出して悪かったな。もう心配いりやせんぜィ」
「あの何があったんですか」
「ちと野暮ったい事でさァ。まあには何も関係ねえや。今日はゆっくり寝な」
「怖くて全然寝れないんですが」


仕方ねーな、と声がしたと思ったら障子がスッと開いた。座りながら後ろを振り向くと呆れた様子の沖田さん。逆光になっているけれど薄い色の髪の毛が輝いていて綺麗。徐に首元のアイマスクを取り外すと

「これ使え。特別サービスだ」

彼は私の前に赤いそれを差し出した。どうすればいいのかわからくて、瞬きを繰り返していると、早くしやせぇ、なんて急かされる。私は静かにアイマスクを受け取った。

「明日には返せよ」
「ごめんなさい。ありがとうございます」

私が布団に入るのを確かめてから沖田さんは自室に戻って行った。そして私も布団に入ってからお借りしたアイマスクを付けた。


*****


翌日、目覚めが早かった私を待ち受けていたのは、昨夜の出来事なんてまるで夢かのように錯覚させるような、変わらぬ日常だった。すれ違い様に挨拶を交わす隊士の方々も、近藤さんを初め土方さんに沖田さん、清蔵さんさえも不審な点は感じられなかったのだ。
食堂で周囲を伺っても斎藤さんの姿はなかった。やっぱり昨日、斎藤さんは……。しかし誰もその事を話し出さないし、私にも教えてもらえないと言うことは秘匿されているのだろう。そうかもしれないと言う事実を知っていながら、確証を得られないこの状況が歯痒かった。
午前のお仕事も午後のお仕事も変わらずやってくる。縫い物をしながらも昨夜の出来事が私から離れることはない。考え事をしながら手を動かしていると、真っすぐだった縫い目が曲がってくる。気付いた時点で軌道修正して二着目、三着目を進めた。

「あー疲れた」

こう目の前のことに集中できないままでは、うっかり自分の指を縫い付けてしまいそうだ。は自分の縫い上げた三着を見た。

「?」

少し曲がっているかもしれないとは思っていた。けれどそこには、見慣れぬ刺繍が出来上がっているではないか。それも三着三様……いつの間に。ちなみにそれぞれ鈴蘭に鳥にクローバーの形をしている。色付きの糸でもないからそう目立たないけれど。こんな刺繍なんて私はしたことないのに。無意識のうちにしてしまったのか。謎だ。

「って、これ近藤さんに土方さんに沖田さんの上着では?」

私が補修をしていたのは隊士の上着だ。その中でも隊長級の物を扱っていた最中での出来事だった。糸を解せないか確認してみたが、結構しっかりと縫われているため難しそうだ。切るとなれば上着の生地にも影響しそうな気がする。


「……はぁ。どうしよう。後で相談しなきゃ」


真面目に補修していたはずが意図せず刺繍を入れてしまうなんて。お叱りを受けるか、最悪の場合切腹を言い渡されるのではないか。場面を想像して不安になった。
確か近藤さん達は話し合いがあるからと(恐らく昨日の件を話し合っていると思われるのだが)、午後は何処かの部屋に籠っているらしい。下手にその部屋に伺って聞いてはいけないことを聞いても良くないだろう。近藤さんの自室を窺ってみて、在室していたら事情を説明すればいいだろう。
は刺繍を入れてしまった三着を持って近藤さんの部屋に伺った。声を掛けても中から返事は聞こえない。今は未だ部屋に戻ってきていないのだろう。

戻ってこられるまで不安だが、居ない以上はどうすることも出来ない。
気持ちを落ち着かせるためにお茶でも飲もうかと思い立ち、私は勝手場に足を向ける。上着は自分の部屋に戻って置いてきた。ここは普段なら誰かしらいるはずだが今日は誰もいないようだ。静かな空間だった。
私は慣れた手つきでお茶を淹れると自室に続く廊下を進む。普段はよく寄っていた斎藤さんの部屋だった場所。昨日までは障子が開いていたのに、今日は閉じられたままだ。
恐らく今日からずっと……そう考えただけで心が痛む。ピタリと閉じた障子の前で足が止まってしまった。

「斎藤さん……」

さようならと心の中で呟いた。その時だった。スッと、静かに目の前の障子が開いたのである。


「っ!?」


明るい髪色とアフロヘアにインナーで覆われた口元と物静かな佇まい。まさか、もうこの世にいないはずの人が目の前に立っていたのだ。私は全身の毛が逆立つような衝撃を受けた。

「あ、あの……!」

斎藤さんに話しかけようと思った。なのに緊張から解かれた身体中から力が抜けていく。手にした盆が揺れた。ああ危ない……と思ったのを最後に、私は意識を手放した。







目が覚めたのは自室だった。視界に映る天井の模様がいつもと同じだったからと言うのが判断の理由。でも私が思ったのは、どうしてここに寝てるのだろうということ。あれ? 確かさっき斎藤さんに会ったような……気がする。

「目覚めやしたか」

傍らから誰かの声がした。


「沖田さん? それに土方さんも」
「聞きやしたぜィ。終兄さんが部屋の前で片手に抱いて、片手に盆に乗った茶持って狼狽してたって」
「医者に診せたら心疲労だろうとよ。今日はゆっくりしろ」


終兄さん……と言うことは、皆が斎藤さんを認識しているということで良いのだろうか。それはつまり私が見た斎藤さんは本物で、幽霊や見間違いなんかではなかったと言うこと。

彼は生きていた。

そう改めて認識しては大きく息を吐き出す。


「斎藤に限ってそんなことは無いと思うが、……一体何があった?」


土方さんに尋ねられて私は正直に答えた。
昨夜の騒動は、実は斎藤さんが粛清されたのではないかということ。朝から姿が見えないので粛清に確信を得たこと。部屋の前を通った時に、斎藤さん本人に会って驚いたこと。緊張が解れて意識が飛んだこと。全部話した。勝手に勘違いして、勝手に安心して、勝手に心配かけて……馬鹿だな私。


「斎藤が粛清されるとはそれこそ真選組がひっくり返るな」
「そうそう。そもそも終兄さんはそっち側じゃないでさァ」
「じゃあ斎藤さんは無事なんですね」


ああ、と言葉を受けては再び息を吐き出す。良かった。斎藤さんが無事で良かった。私の様子を見て二人の表情が少し落ち着いたように見えた。

「あの、そうだ! そこにある上着の件なんですが……」

意を決して口を開く。私の視線の先には先ほど畳んでおいた上着が三着重ねられていた。近藤さんにお話しするのも勿論だが、まず目の前にいる土方さんに相談しなければいけないと思ったから。
沖田さんに手渡されたそれを受け取り、問題個所を広げながら誤って刺繍を施してしまった事を伝えた。二人とも刺繍を手で触りながら見つめている。


「ほう。で、何で刺繍した?」
「それが良くわからなくて。斎藤さんの件をずっと考えながら縫っていたら、つい……。でも私、今までこんな刺繍なんてしたこともなかったのに」
「土方さん。コレ、結構すごいですぜィ」

「無意識にしてた刺繍ねぇ。。俺はこんな高等な趣味はねェからわからねーが、それ、攘夷組織関係あると思うか?」
「いえ。ちょっと私もわからないです」
「だよな……。まああれだ。記憶喪失以前の出来事も、若干曖昧になってきてるのかもな。は幕府に仕える家系だ。その娘なら針仕事の一つ二つ教えられていてもおかしくないだろうよ」
「まあ、単純に縫ったりボタンを付けたりは出来ますけど」


記憶喪失以前の出来事は鮮明だった、と思う。確かに大昔の事は普通の人と同じように忘れてしまっているけれど。刺繍もその大昔に習得していたのだろうか。


「ったく、今回は裏地で目立たないし咎めはしねぇ。だが以後気をつけろ。誰それ構わず隊服に刺繍入れられたら困るからな。近藤さんには俺から伝えておく」
「申し訳ございません。気を付けます」


針仕事中は考え事は無しだ。うっかり怪我をするかもしれないし、実際危なかったから。集中していればこんな失態は起こらないだろう。
自身の隊服に施された刺繍を指で撫でながら沖田さんが言った。

「見てくだせェ。俺のは“手裏剣”でさァ」
「これは何だ。提灯行列か?」
「それ……四葉のクローバーと鈴蘭です」
「「……」」

押し黙った二人が明後日の方向に視線を向けている。確かに、色糸を使っていない単色の刺繍だし生地と同色と言うのもある。これではモチーフの特徴を捉えにくいだろう。二人にとって刺繍なんて興味がないというのが大きいだろうけれども。
コホンと咳払いの後、先の件で養生するように言い渡された。その日は作業もなく部屋でゆっくりと過ごすことになった。

翌日からは心機一転、お仕事再開だ。
変わらない日常の裏側で隊士たちの噂話が広まっている。それらは、直接は届かないけれど風に乗って届くこともある。壁に耳あり障子に目あり。お盆を手に抱え、身を縮こめて壁に身を隠す私の裏側で、隊士たちがヒソヒソとあの夜を語っていた。正直、盗み聞きするつもりなんてなかったけれど。もう体は動かない。
その噂の中で、私は三番隊隊士だった井川さんが屯所内での窃盗並びに横領を行い、局中法度に背いたとして粛清された事実を知った。


終兄ィ観察日記つけたい。んでもって事件ですね。三番隊が出てきた時点で粛清ネタは必須。
20200913*星宮はちこ   裏語